
2025.8.11
サンディエゴコミコン2025レポ:『プレデター:バッドランド』パネル
2025年11月、『プレデター』の最新作が劇場公開されます。同シリーズでは、狩猟文化に重きを置く地球外生命体のプレデターと人間の死闘が繰り返し描かれてきましたが、『プレデター:バッドランド』は全く新しい切り口に。今回の主人公は人間ではなくプレデターなのです!
物語は、若きプレデターのデクが掟を破り、生存不可な最悪の地<バッドランド>へ。思いがけない協力者や史上最凶の敵と遭遇し、狩るか狩られるか――というもの。
▼『プレデター:バッドランド』予告編▼
そんな同作のパネルディスカッションが、今年の「サンディエゴコミコン」(SDCC)の2日目(=7月25日金曜日)に開催。監督のダン・トラクテンバーグ、俳優のエル・ファニングとディミトリウス・シュースター=コロアマタンギ、特殊効果デザイナーのアレック・ギリスがQ&Aに応じました。
Predator: Badlands Panel at Hall H
新予告編が上映された後、ステージに現れたのはプレデター! プレデタービジョンがスクリーンに映し出され、我々観客が狙われていることが分かります。


ターゲットに選ばれたのは、司会進行役のケビン・スミスでした、というオチ付き。会場から笑いが起こりました。


『プレデター:バッドランド』の監督ダン・トラクテンバーグはキャリア初期、映画やゲームなどのポップカルチャーを紹介するPodcast番組の司会を担当。
スミスは、2007年にトラクテンバーグの番組に出演したことがきっかけで彼と良き友になった、と触れてから、トラクテンバーグ、そして『プレデター:バッドランド』で主演を務めたエル・ファニングとディミトリウス・シュースター=コロアマタンギ、特殊効果デザイナーのアレック・ギリスを舞台に招きました。

冒頭、トラクテンバーグはホールHに登壇した喜びを爆発させます。
「私は元々Podcast番組をやっていて、映画やコミック、ビデオゲームのファンでした。8年間、毎年欠かさずホールHに来ていて、深夜2時から並び始め、皆さんと同じように待機場所で交代しながら入場の順番を待っていました」
「だから、コミコンで映画を紹介するということは、私にとってものすごく大きな出来事なのです。映画を作ることを考えるたび、『これはコミコンでの晴れ舞台になるかもしれない。やってみようかな』と思ったりして。でも、もし出品するのなら、真に意味のある作品でなくてはいけないと、常に考えていました」
「そして本日、心から誇りに思える最高の作品を披露できます。この映画で皆やケビンと一緒にこの場に立てることを本当に嬉しく思います」

トラクテンバーグは、ゲームプロ誌のコンテストに『プレデター』のゲームステージのデザインを応募して落選した経験もある、と話すほど『プレデター』への思い入れが人一倍。そのため、「このフランチャイズでまだ誰もやっていないことはなにか?」と随分模索をしてきたそうです。
アイディアのひとつは、今年6月に配信開始されたアニメ映画『プレデター:最凶頂上決戦』。もうひとつは『プレデター:バッドランド』の構想に繋がった“バランス”というキーワード。その流れで、『プレデター:最凶頂上決戦』の拡張版エンディング(※)が上映され、大きな歓声を集めました。
(※ネタバレに繋がるので詳細は伏せますが、すでに同エンディングに差し替えられているので、気になる方は配信サービスでご確認を!)

トラクテンバーグは『プレデター』シリーズについて思考を巡らせるなか、とあることにも気づいたそうです。それは、プレデターが“銀河で最も優れたハンター”にも関わらず、人間に勝ったことがない、ということ。
「そこで、“プレデターが勝つ映画”を作ることを考えましたが、ただのスラッシャー映画――つまり悪役が勝つだけの作品――にするのは好きではありませんでした。それよりも、生々しくて心に訴えかけるような物語にできないか、そして観客がプレデターに共感できるようなものにできないか、を追求しました」
「さらに気づいたのは、『プレデター』シリーズに限らず、僕たちは“脇役”に惹かれるということです。クリーチャーやロボットを好きになっても、彼らはたいていサイドキックや悪役にとどまり、主人公になることはほとんどありません。だからこそ、観客をその旅に連れていくことが大きな挑戦だと感じたのです」
「お気に入りのテーマパークで、何度も乗ったアトラクションを楽しむのも、もちろん良い。でも、本当に特別なのは、なにが起きるか全く分からないまま、新しいライドに乗って絶壁の先端まで上がっていくあの感覚だと思います。そして、それこそが今回の“バランス”なのです」

そして話題は、『プレデター:バッドランド』のインスピレーションへと移ります。
「この映画の面白さは、主人公である若きプレデターがアンドロイドと一緒にいる、という点にあります。発想のもとになったのは、チューバッカとC-3POのあのイメージ(※)です」
(※『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』でバラバラ状態になったC-3POをチューバッカが背負うシーン)
「でも、かっこいいポイントがあって、それはチューバッカではない、ということ。観客がついていくのは、フレンドリーなクリーチャーではなく、プレデターなのです。彼は獰猛で、超クールで、完全なるアンチヒーロー。私の中では『マッドマックス』シリーズや『コナン・ザ・グレート』、あるいはクリント・イーストウッド作品に登場するキャラクターに近い存在ですね。そんな彼を見ながら、観客も彼の背中に“縛り付けられ”、彼が乗り越えていく試練を一緒に体験する――それが私にとっては最高に楽しい部分でした」
「また、このシリーズのDNAは、クリーチャーそのものだけではなく、ジャンルの組み合わせにもあると思っています。私が初めて『プレデター』を観たときは、おそらくまだジョン・カーペンター監督の作品を観る前だったと思います。だからこそ、最初はアクション映画として始まり、途中からホラーになり、さらにSFになる――そんな展開を体験したのは初めてで、『なんてこった!』と衝撃を受けたのです。だから今回は、観客を予想外のアドベンチャースリルライドに連れて行きます」

本作でデクの相棒を演じたエル・ファニングは、脚本を読んで心底驚かされた、と振り返ります。
「皆さんと同じように、私も(監督が手がけた)『プレデター:ザ・プレイ』の大ファンでしたし、ダンが『プレデター』フランチャイズでやってきたことは、本当に前例がないと思います。脚本を読んで惹かれたのは、そこにすごく心と感情が詰まっていたからです」
「『プレデター:ザ・プレイ』にもそれは確かにありましたが、今回の作品がユニークなのは、人間がひとりも出てこないという点です。私が演じるのは合成アンドロイドで、主人公はプレデターというクリーチャー。にも関わらず、彼らには人間味や温かさがあり、2人の間には意外な友情も描かれているのです」

また、俳優人生において貴重な経験を積むことができたと話します。
「私にとっては新しいジャンルで、肉体的にも演技的にもこれまでにないチャレンジがたくさんありました。また、本作で私は1人2役である、と付け加えておきます。2人のキャラクターを演じ分けることが、とても濃い経験へと繋がりました」
「屋外の撮影中、私は何時間も(デクを演じた)ディミトリウスの背中にしっかり固定されていて、リュックのように背負われながら、空中を飛んだり、川の中でワイヤーに吊るされたりしました」

ディミトリウス・シュースター=コロアマタンギは、デク役のために肉体も頭脳もフル回転させなくてはならなかったようです。
「とても楽しい――実験のようなものだったと言えるかもしれません。デクというキャラクターに命を吹き込むプロセス全体がそうです。最初はスーツに合わせて身体を鍛えるトレーニングに勤しむ日々が続き、少し大変でしたが、やりがいを感じました。そしてなによりも、1日の終わりにヤウチャの足(プレデタースーツのパーツ)を脱ぐときの達成感は格別です」
「それから、言語の習得も重要でした。本作のために一から作り上げられたヤウチャ語を学ぶのは、とてもクールな体験だったと思います。フランチャイズのなかできちんと確立されていなかった言語を、今回こうして新たに取り入れられたことを皆さんにお見せできるのが楽しみです」

ストーリーの設定上、常に背負い背負われ状態だったコロアマタンギとファニング。撮影初期段階では、ワイヤーや一輪車、デジタルなど様々な方法を駆使して撮影が行われていたところ、ファニングの一言によって最も原始的な方法に落ち着いたのだとか。トラクテンバーグはこう話します。
「ある日、エルが言ったのです。『これ、全部物理的にできたらかっこよくない? 私が体を変な風に動かして皆を騙して、ただ後ろ向きに歩いたらどう?』って。『そのマジックトリック、実現できたらすごくかっこよさそう』と思って実際に試してみたら、本当に素晴らくて、その後はずっとその方法でやりました。色々な仕掛けを使って撮影したけれど、一番かっこよくて自然に感じられたのは、エルが後ろ向きに歩いて、ディミトリウスが背負っているシーン。僕たちは『これだ!』って思ったのです」
また、これまで6つの『プレデター』作品に関わってきた特殊効果デザイナーのアレック・ギリスは、トラクテンバーグとの激しい議論やテストを幾度も重ねたと振り返ります。
「監督の求めているものが分かったとき、(『プレデター』1作目の効果も手がけた)恩師スタン・ウィンストンのある言葉がよみがえりました。『効果は物語と監督のビジョンに奉仕するためにある』というものです」
ギリスは最終的に、クリエイティブ会社Wētā Workshopと共同で独自システムを開発。プレデターの感情表現の幅を広げることに成功したようです。

トークセッション後は、記念撮影。観客は、パネル開始直前に配られていたプレデターの仮面を着けて写りました。



その後、『プレデター:バッドランド』の冒頭15分が上映。デクが一族から追放される経緯が描かれており、確かに、プレデターの“感情”を強く感じられるものになっていました。これから合成アンドロイドと出会い、どのような冒険を繰り広げていくことになるのか、楽しみです!
Predator: Badlands POPUP
SDCC期間中、会場お向かいのハードロックホテルにて、『プレデター:バッドランド』のPOPUPが開催!


入り口にはプレデターがおり、「ゴゴーッ」「プシューッ」と怪しげな音が鳴っていました。

中に入ると、戦士・プレデターによるコレクション(?)が展示されています。

合成アンドロイド用のパーツや作業服らしきものもありました。



『プレデター:バッドランド』の合成アンドロイドは、実は『エイリアン』シリーズに登場するウェイランド・ユタニ社製。監督は「慎重に考えたい」と話していましたが、今後のクロスオーバー展開にも期待が高まります。


最後に展示されていたボックスは、人が近づくとガタッと動く、お化け屋敷のような仕掛け付き。

展示を楽しんだ後は、バースペースへ。

エル・ファニングが演じる合成アンドロイドがかかしのような状態で飾られています。


入場時に配布されたコインを使って、フリードリンクをゲット。

『プレデター』ユニバースに乾杯!

#サンディエゴコミコン