
2025.8.12
サンディエゴコミコン2025レポ:『ピースメイカー』パネル
「優しさこそ、パンク。」
2025年7月、最も有名なヒーローを主人公に据え、リアルでもオンラインでも暴力まみれなこの世界における“反骨精神”をメッセージに込めた映画『スーパーマン』が公開。ジェームズ・ガン監督のDCユニバースが華々しく幕を開けました。
その正式な続編が、ドラマ『ピースメイカー』のシーズン2。主人公は、映画『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』に登場していたピースメイカーことクリストファー・スミスです。
彼は平和のために手段を選ばない極端な思想の持ち主で、特攻隊スーサイド・スクワッドの指揮官リック・フラッグが政府組織A.R.G.U.S.に背こうとしたときに、仲間でありながらも殺害。その後、ピースメイカー自身も別のメンバーに撃たれ、瀕死状態に。
『ピースメイカー』のシーズン1は、“その後”。実は一命を取り留めていたピースメイカーが、A.R.G.U.S.のスタッフと共に新たな任務に挑み、その過程で成長していく様子が描かれていました。
シーズン2では、A.R.G.U.S.の長官に、フラッグの父リック・フラッグSr.が就任。ピースメイカーは、復讐心に燃えるフラッグSr.に追い詰められるなど、うまくいかない現実から抜け出すため、別次元の世界へ飛び込むようです。
▼『ピースメイカー』予告編▼
▼『ピースメイカー』最新予告編(英語字幕のみ)▼
「サンディエゴコミコン」(SDCC)では3日目(=7月26日土曜日)、『ピースメイカー』シーズン2のパネルディスカッションが開催。
最新予告編の上映後、製作総指揮ジェームズ・ガン、主演ジョン・シナ(ピースメイカー役)に加え、ジェニファー・ホランド(エミリア・ハーコート役)、フレディ・ストローマ(ビジランテ/エイドリアン・チェイス役)、スティーヴ・エイジー(ジョン・エコノモス役)、フランク・グリロ(リック・フラッグSr.役)、ソル・ロドリゲス(サーシャ・ボルドー役)、ティム・メドウス(ラングストン・フルーリー役)がステージに集まり、和気あいあいとした雰囲気でトークセッションを行いました。
Peacemaker Panel at Hall H
ジェームズ・ガンによる呼びかけで、ジョン・シナが登場!

ピースメイカーの衣装を着ていました。期待を裏切りません!


レオタ・アデバヨ役のダニエル・ブルックスは、体調不良につき欠席だとアナウンス。

どうやら食中毒のようだという情報を耳にし、シナは対策のために水をがぶ飲み。さすがWWEスーパースター、会場からは“水飲みチャント”が発生していました。

写真左から、ジェームズ・ガン、ジョン・シナ、ジェニファー・ホランド、フレディ・ストローマ、スティーヴ・エイジー、フランク・グリロ、ソル・ロドリゲス、ティム・メドウス。

はじめに司会者が、「ガン監督が観客の前に立つのは『スーパーマン』以来ですね」と触れると、シナが手を叩きながら席を立ち、ガンの功績を讃えます。ほかのメンバーもすぐそれに続き、会場からは割れんばかりの拍手が起こりました。


そんな愛され男=ガンの撮影現場の特徴は、「とにかく楽しいことだ」とキャストは口を揃えます。ジェニファー・ホランドは、このように付け加えました。
「皆、親切で、優しくて、楽しい人ばかり。ジェームズの現場にいられるのは、本当に光栄です。私にとって、そして多くの人にとっても一番ユニークだと思うのは、撮影中、ジェームズが即興でセリフを書き加えること。撮影しながら、アドリブをどんどん投げてくるのです。しかもずっと笑いっぱなしで、ほとんどの場合、なにを喋っているのか聞き取れないぐらいです。でも、それがこの現場らしさと言えます」

今この場にいることも楽しくて仕方がない、といった様子の『ピースメイカー』チーム。でも、物語は楽しい部分だけでなく、様々な葛藤が描かれるようです。
「“毎シーズン同じキャラクターがそのまま戻ってくるドラマにすること”だけは避けたかった」「キャラクターの成長や変化、時には退化さえも見たい」とガン。シーズン2についてこのように説明しました。
「今回のピースメイカーは、前シーズンで向き合うことになった自分の心の闇と、どう折り合いをつけるかを模索している最中です。しかし、世界はありのままの彼を受け入れてくれません。ヒーローとして認められず、ハーコートとの両思いも望みはない。なにひとつ上手くいかないなか、彼は量子展開室(Quantum Unfolding Chamber)を通してパラレルワールドを発見します。そこは彼にとって“完璧な世界”のように見え、新たな物語が始まります」

続けてシナが、ピースメイカーについて分析します。
「以前にも話したことがあるのですが、改めて言います。ジェームズのように、“スーパー”な状況を描きながらも、我々の誰もが共感できるテーマで作品を作るというのは、とても重要だと思います。なぜなら、現実離れしたキャラクターたちの旅路は応援したくなりますし、特にそれが共感を呼ぶような道のりであれば、もっと夢中になれるからです」
「私が予告編を見たときに映っていたのは、人生のちょっとしたスランプを迎え、『隣の芝生の方が青いのではないか』と考えている人物でした。それは、大勢が共感できる内容だと思いますし、きっと皆さんに楽しんでもらえることでしょう。なぜなら、我々誰しもが『隣の芝生は青い』と思ったことがあるからです」


シーズン1以上にピースメイカーの人間臭さにフォーカスが当たるであろう今シーズン。ガンはシナの演技を絶賛しました。
「彼が俳優として、この2年でどれほど成長したか、信じられないほどでした。シーズン2は、全キャストによる素晴らしい仕事のおかげで、特別なものになっています。なかでも、ジョンの演技は見事です。一見の価値があります」
シーズン1の顛末により、A.R.G.U.S.所属のレオタ・アデバヨとエミリア・ハーコートはキャリア迷子に。アデバヨは前向きのようですが、仕事がアイデンティティだったハーコートは精神的に参ってしまいます。
今回のパネル中に上映された本編映像で、ハーコートは酒場で声をかけてきた男性たちに暴力を振るい、返り討ちに遭っていました。痛々しい場面でしたが、演じたホランドにとっては、幸運な出来事だったようです。
「撮影後、このアクションシーンで一緒に働いたスタントの皆さんがやってきて、『あなたは、私たちが一緒に仕事をしたなかでも最高の俳優です。この素晴らしい作品の一部になれて誇りに思います』と握手を求めてきたのです。(俳優人生のなかで)最も報われた経験でした」
フレディ・ストローマ曰く、ピースメイカーの悪友ビジランテが「唯一変わらないキャラクター」である一方、A.R.G.U.S.にそのまま居座るジョン・エコノモスは、スティーヴ・エイジー曰く、「ギリギリの綱渡り状態になる」とのこと。どうやら、上司リック・フラッグSr.と友人ピースメイカーとの間で板挟みとなるようです。

今シーズンの新顔は、A.R.G.U.S.の長官リック・フラッグSr.役のフランク・グリロ、フラッグSr.の部下サーシャ・ボルドー役のソル・ロドリゲス、A.R.G.U.S.のエージェント ラングストン・フルーリー役のティム・メドウス。
すでにアニメ『クリーチャー・コマンドーズ』と映画『スーパーマン』でも同役を演じているグリロは、壇上にいた全員から“嫌な奴”認定を受けていじられまくり、ある意味ムードメイカーの役割を果たしていました。「フラッグSr.の動機は、息子への復讐だけれど……、俺の息子たちはどこにいるかな?」と脱線する光景も。(※観客席から声が上がるも、本物の息子だったかどうかは不明でした)
ロドリゲスは、監督のお気に入りであるコミック発のキャラクターの実写化にあたり、大きなプレッシャーを感じたと言います。撮影開始前、役作りについての長文メッセージをガンに送信しようかと迷い、ドン引きされてクビになるかもしれない、とギリギリでとどまったことを明かしました。また、撮影現場の風通しの良さについても触れます。
「『彼(ガン)は嫌な奴を雇わない』ということで有名ですが、それは本当です。現場にいる全員がとても親切で、そこにいられることが本当に幸せでした。……ただし、フランクを除いて(笑)」
この日上映された本編映像で、「私は鳥の種類を全く見分けることができない“Bird Blind”なんだ」というネタで、会場を爆笑の渦へと巻き込んだ、フルーリー役のティム・メドウス。
同役のオーディションには約300名が参加するも、適任だと感じる人が現れなかったそうです。キャスティングに苦しむなか、ガンはふとメドウスが頭に浮かび、声をかけてみたのだとか。
「ジェームズ・ガンからのお誘いだなんて、迷う余地なんてないよ」と言うメドウス。そして、ガンの勘はあたり、「メドウスが演じたフルーリーは、最初から彼のために書かれたように完璧だった」そうです。
さて、『ピースメイカー』と言えば、絶対にスキップすることができない、奇妙な踊りのオープニングムービーです。
▼『ピースメイカー』シーズン1 オープニングムービー▼
シーズン2がどのようなオープニングになるのかは、当然気になるところ。ガンは、「やり過ぎないようにした」と切り出しました。
「シーズン1のオープニングが奇跡的だったのは、誰も事前に見ていなかったこと。人々は、“今私は一体なにを見せられているんだ!?”と信じられなかったと思います。今回はシーズン1を超えようとしているわけではありませんが、規模が大きくなっています。そして、雰囲気も異なります。新しいキャラクターや新しいダンサーも出てきますよ」

ホランドは、観客からの「Spill It!」(バラしちゃえ)コールに応じ、とある有名作品のオマージュがあると明かします。
「ジェームズの表現したかった雰囲気を、素晴らしい振付師が特別な形にしてくれました。踊っていて本当に楽しかった。あと、私のなかでどうしても実現したかったことがあって。宇宙に向かって、“お願いだから『ダーティ・ダンシング』のリフトをやらせてほしい!”って願ったのです。そして、あのリフトを実現することができました。最高の体験でした」


また、ガン監督の作品と言えば、音楽も要のひとつです。シーズン2のサウンドトラックは、「もっと今っぽくて、過去15年ぐらいの曲がたくさん詰まっている」だそう。「大量のスイートメタルを集めたプレイリストがあり、時にはそのなかの曲のためにシーンを書いたり、シーンのために曲を選んだりします」と話すガン。例えば、戦闘シーンでは、シルヴァータイドの「Blue Jeans」が流れると話しました。
また、オーディエンスから「オジー・オズボーン!」という声が上がると、このように哀悼の意を表明。拍手が起こりました。
「そう、予告編にはオジー・オズボーンの曲も使用しています。言及してくれてありがとう。先日とても悲しい出来事があり、今朝、予告編にオジー・オズボーンの曲を使っていることを思い出しました。劇中でも、彼の楽曲を使っています」
DCの最新ドラマ『ピースメイカー』は、2025年8月22日(金)に第1話配信予定。以降毎週金曜週次配信です!
#サンディエゴコミコン